最初は、変なヤツだと思った。

次に出会ったときは、弱いヤツだと思った。

でも、その次に会ったときは、良いヤツだと、思った。



そしてその次は――














「なぁ、ラクスはアスランのどこが好きなんだろうな」

「……は?」


予想はしていた。
は?とかへ?とか間の抜けた返事が第一声になるだろうってことは。
でも、他に訊けるヤツもいないんだから。仕方無いだろう?


「どうしたのカガリ、急にそんなこと…」

「急に、で悪かったな。いま、ふっと思ったんだよ」


嘘じゃ、ない。
『いま』、ちゃんと思ってた。

昨日だって、大きい目で見れば『いま』に入る。


「そ、そんなことはどうだっていいんだっ。キラ、お前どう思う?」

「んー……憶測だけどさ、アスランってああ見えて、結構揺れやすいじゃない?優柔不断っていうか」

「あ、ああ。まぁな」

「で、ラクスはああ見えて芯はすごくしっかりしてる。」

「………」


なんとなく、答えが読めてきた。
面白くなくて口を噤んだけど、キラは変わらずの口調で続ける。



「守ってあげたい、とか思ったんじゃない?…見た目は逆だけどね」



ふふ、とキラは笑う。
そこに『複雑な心情』は見受けられなくて、
ああ、キラは違うんだと、思った。


「……そうだな。」


言うが早いかソファに腰掛けているキラに背を向け、
この部屋の脱出口である扉へと足を速める。


「?…カガリ?」

「失礼する。」


わざと、
声を凛とさせてオーブ首長モードのスイッチを入れてみても、
キラはそれ以上何も追求しない。




――守ってあげたい、とか思ったんじゃない?




キラの言葉が、キラの声が、脳内に響く。




――見た目は逆だけどね




キラは、無邪気に笑う。

きっと、わたしの気持ちなんて、知らないで


知らないで。




知られて、たまるか。








黒に近い藍の、男の癖にきれいな髪で。
それに似合う、スーツも制服も真紅で。
いつもいつも眉根を真ん中に寄せて、眉間に皺作っていて。
バカとか言うし、口だって良くなくて。



でも、










 ミトメタクナーイッ


急に、聞き慣れない声のような音が聞こえた。
ビックリして見てみれば、丸い球体が飛び跳ねていて。



「おまえ…」


 ハロハロッ


「タイミング良すぎだろ、バカ…」


 ハロッ







わたしだって、認めたくなんて










「カガリ。」


一瞬、自分の耳を疑った。
こんな声のヤツ、わたしは一人しか知らない。


「カガリ?」


なんだってこうタイミングが悪いんだ。
会いたくないときに、会いたくないヤツに


「おい、カガリ、大丈」

「聞こえてるよ。お前じゃないんだから。」

「俺は2回も無視したりしない。」

「無視なんてしてないっ。お前のタイミングが悪いんだ、バカッ」



理不尽な、
ことを言っているのは自分でも分かってた。


けど、


仕方ないじゃないか。



「バカで悪かったな。コイツが勝手に逃げてったんだよ。」



そう言いながら「ハロ」と呼ばれる球体をしっかり捕まえる。
そんな変なもの作るからだよ、とか、まだまだ理不尽なことを言いそうになる口を
抑え付けて、急いで別の言葉を用意する。


「それ、ラクスに?」

「ああ…うん。今度は白い色がいいって。」




きれいないろ。



ラクスに、よく映える色。


「きっと、喜ぶよ」

「…ありがとう」









変なヤツだと思った。
弱いヤツだと思った。
良いヤツだと思った。




でも、



笑った顔が、すごくすごく、







カッコ良いじゃないか







なんて、思ったんだ








「……ッ!?」


ピシリ、と、ストライク。
親指を引き金にし、人差し指に思い切り勢いをつけた。
それはキレイな音を出して額に直撃した。


「なにするんだ…ッ、かなり痛いぞソレ」


本当に本当に痛そうに、紅くなった額をさすっている。


ごめん、でも、最後の理不尽だからさ。


「わたしの気持ちの全部だよ、」って。







「じゃあな。」

「おい、カガリ?」






















なんで






















涙なんて、出ていないのに






















「なんで、だろう……」















































い た く て い た く て た ま ら な い    
















































(06/01/06)